映画「トゥルー・グリット」について

西部劇はお好きですか?荒野を駆けるガンマンが、たった一人で悪者を退治していくさまはカッコいいですよね。アメリカでは日本でいうところの時代劇にあたるようですが、日本ではあまり好まないという人も多いように思います。また、名作と言われている西部劇はどれも古い映画で、中々見る機会がない、手が伸びないというのも日本で西部劇が流行らない要因なのではないかと思います。西部劇が苦手という人や、どこから手を付けたらいいのか分からないという西部劇初心者のための映画が作られました。コーエン兄弟による「トゥルー・グリット」です。典型的な勧善懲悪の西部劇ではなく、父親を殺された少女が復讐のために立ち上がるというストーリーで、西部劇を知らない人でもとても楽しめる内容になっています。

映画「トゥルー・グリッド」について

映画「トゥルー・グリット」は、「ノーカントリー」でアカデミー賞を総なめにしたコーエン兄弟が監督、製作、脚本を担当した2010年のアメリカ映画です。「E.T.」、「シンドラーのリスト」のスティブン・スピルバーグが製作総指揮を執りました。原作はチャールズ・ポーティスの「勇気ある追跡」で、この作品は1969年にジョン・ウェイン主演で映画化され、大ヒットしました。本作はその映画版のリメイク作品と言われていますが、コーエン兄弟は「映画のリメイクではなく、原作の再映画化」というスタンスを取っています。本作の脚本は父を殺された少女の視点となっており、1969年版よりも原作に忠実に作られています。イーサン・コーエンは「リメイクした理由はチャールズ・ポーティスの原作に強く惹かれたから」「オリジナル版は子供の頃に観たきりで全く覚えていないため、影響は全く受けていない」と明かしています。主役のルースター・コグバーンにはジェフ・ブリッジスが選ばれ、マット・デイモン、ジョシュ・ブローリン、バリー・ペッパーなどが共演しています。本作のもう一人の主人公マティ・ロスを演じたヘイリー・スタインフェルドは、撮影当時弱冠13歳でこの作品が映画初出演だったにも関わらず、生意気だけれど賢く芯のある少女を好演し、アカデミー助演女優賞にノミネートされました。アメリカとカナダでは公開初週末の3日間で2483万443ドルの興行収入を記録する大ヒットとなり、第61回ベルリン国際映画祭のオープニング作品にも選ばれています。また、アカデミー賞では前述の助演女優賞のほか、作品賞を含む10部門にノミネートされましたが、無冠に終わっています。

ストーリー(ネタバレ)

牧場主の娘として生まれたマティ・ロスは、責任感が強く信念を持った女の子で、わずか14歳にして父の経営する牧場の経理を任されているほどです。ある雪の降る寒い夜、マティの父が彼の部下であるトム・チェイニーによって無残にも撃ち殺されてしまいます。知らせを聞いたマティは、遺体を引き取るため、単身オクラホマ州の境にあるフォートスミスへとやってきます。チェイニーはマティの父のポケットに入っていた、たった2枚の金貨のために彼を殺したのでした。殺人の罪で裁かれることを恐れたチェイニーは、法の及ばないインディアン領へと逃げ込み、お尋ね者のネッド率いる悪党集団に仲間入りするのでした。マティは父の形見の銃を手に取り、父の仇を討つことを心に誓います。しかし銃の扱いも知らない14歳の少女1人で逃走したチェイニーを探し、懲らしめるなんて大抵無理な話です。マティはまず、父の取引相手だった人物のもとを訪れ、「弁護士に頼んで訴えるわよ!」と大人顔負けの交渉術を披露し、馬と金を手にします。黒毛の立派な馬は「ブラッキー」と名付けられました。さらにマティはその金で用心棒を雇うことを決めます。ちょうどその時、ある裁判が開かれていました。被告人はアイパッチをはめた片目の連邦保安官、ルースター・コグバーンでした。彼は罪人を見つけるとなんの躊躇もなく殺してしまうことで知られていて、彼のその所業が問題となっていたのでした。コグバーンは悪びれもせず、殺した人数も覚えていないと言い放つのでした。マティは彼こそが「トゥルー・グリット(本当の勇気)」の持ち主であると考え、彼を雇うことを決めます。しかし肝心のコグバーンは、マティのことを子ども扱いし、話も聞いてくれません。ですがマティは諦めず、得意の交渉術でコグバーンを説得します。彼女の熱意と報酬の魅力に負けたコグバーンは渋々ながらもマティの復讐に協力してくれることになります。

旅の始まり

マティは父親の残したぶかぶかのコートと帽子をかぶり、やる気満々で旅に出ようとします。そこへ別件でチェイニーを追っているという若きレンジャー、ラビーフも加わります。ラビーフはチェイニーは単独ではなく、インディアン領を取り仕切る大物悪党ネッドと行動を共にしているという情報を手に入れていました。ついに3人の危険な旅が始まろうとしていましたが、インディアン領は法の目が行き届かない場所であり、寝る場所も食べるものもろくにない環境です。そんなところに14歳の少女は連れていけない、足手まといだとコグバーンとラビーフはマティを置いて二人だけで旅立つのでした。しかし、父の仇をこの手で討つという強い信念を持ったマティは、馬を駆って果敢に彼らを追いかけます。流れの早い川にも恐れを成さず、馬ごと飛び込んで見事に渡って見せたのでした。そんな頑固で生意気なマティにラビーフは腹を立て、お尻を叩きます。しかしコグバーンは彼女の勇気に関心し、ラビーフを叱り飛ばすのでした。結局ラビーフはパーティから抜け、単独で行動することに。マティとコグバーンは二人で森の中を進んで行きます。コグバーンに信頼を寄せかけていたマティでしたが、コグバーンは実は飲んだくれでだらしのない人間でした。その上過去の栄光の自慢話を延々と聴かせ「南部でギャングをやっていた」「七人の敵を一人でやっつけた」なんていう本当か嘘か分からないような話をしてきます。片目がなくなったのも、そうやって無茶な戦いをしてきたためでした。マティは言います。「この世の中では、罪には代償が求められなければならない」と。

チェイニーの手がかり

森の中を歩く二人の前に、木に吊るされた死体が現れます。チェイニーかもしれないと木に登って確認しますが、結局は別人でした。吊るされたままにするのも忍びないということで死体を地上に落とすと、そこへ熊の毛皮を被った男が現れます。男は歯医者だと名乗り、その死体が欲しいというのです。死体を与える代わりに、2人はチェイニーに関する有益な情報を手に入れます。川べりにある小屋にネッド率いる悪党集団に所属するムーンとクインシーが住んでいるというのです。2人は先回りしてムーンたちを待ち伏せすることにしました。もう少しでチェイニーに罰を与えられる・・・。そんな高まる気持ちを抑え、彼らのアジトを崖の上から監視する2人。しかしそこに現れたのはなんとラビーフだったのです。どこかで同じ情報を得たらしいラビーフは、その後やってきたムーンとクインシーにあっさりと捕まってしまいます。コグバーンはラビーフを助けるため、崖の上から敵を銃で打ち、事なきを得るのでした。

チェイニーとの遭遇

コグバーンとマティの作戦を知らなかったとはいえ、結果的に邪魔をしてしまったラビーフ。彼のせいでチェイニーへの手がかりも途絶えてしまい、コグバーンはやる気をなくして飲んだくれてしまいます。マティはラビーフを頼ろうとしますが、彼もまた当てのなくなった追跡には連れていけないと、再び1人で旅立ってしまうのでした。仕方なくコグバーンと行動を共にするマティ。しかしコグバーンはまだ明るいうちから酒をあおり、酔って寝てしまいました。マティはそんなコグバーンを尻目に、川へ水汲みに出かけます。するとなんの偶然か、川の向こう岸にチェイニーがいたのです。コグバーンもラビーフもそばにはいません。マティは自身で銃を構え、難きチェイニーに向かって発砲しますが、弾はそれてかすり傷を負わせただけでした。逆に、マティは銃声を聞いて駆け付けたチェイニーの仲間に捕えられてしまいます。一方コグバーンも、マティの銃声を聞いて目を覚ましていました。マティがいないことに気付いたコグバーンの前にネッドが現れます。ネッドはマティを人質にし、コグバーンを大勢で打ちのめそうとしていたのです。コグバーンはネッドたちの要求をのみ、対決に向かいます。

ネッドとコグバーンの対決

マティと見張り役のチェイニーを崖の上に残し、ネッドとコグバーンは広い荒野で対峙しました。ネッド側は4人、コグバーンはたった1人です。マティは崖の上からコグバーンの姿を祈るように見ていました。と、その時突如チェイニーが倒れます。ラビーフが助けに来てくれたのです。ラビーフはライフルを構えてネッドたちを狙います。崖から荒野までは300メートルはあります。狙いを定めていると、コグバーンが敵の中へと突っ込んでいきました。口で手綱を加えて馬を操り、両手に二丁拳銃を持って次々に敵を倒していきます。しかし肝心のネッドを仕留め損ね、コグバーンは落馬して馬の下敷きになってしまいました。ネッドが馬から降り、コグバーンの前に立ちます。もはやこれまでかと思われたとき、ラビーフの放った銃弾がネッドを捕えたのでした。ネッドは倒れ、コグバーンは生き延びたことを確信したのでした。

マティの勇気

ほっと一息ついたのもつかの間、ラビーフの頭に石が振り下ろされます。チェイニーが生きていたのです。頭から血を流し、気絶するラビーフ。マティは咄嗟にラビーフの銃を手に取り、チェイニーに向けて発砲しました。今度は銃弾は真っ直ぐにチェイニーに飛び、遂に仇を討つことに成功したマティ。しかし、銃を撃った反動で自身も後方に吹き飛び、深い洞窟へと落ちてしまったのです。洞窟の中には白骨化した死体たちと毒蛇が待っていました。ここは毒蛇たちの住処だったのです。マティはラビーフに助けを求めますが、一向に返事がありません。しかも最悪なことに、毒蛇に腕を噛まれてしまいます。意識が薄れてくるなか、コグバーンが駆けつけてマティを引き上げてくれました。一刻も早くマティを医者に診せねば彼女の命が危ない。意識を取り戻したラビーフは、「馬は一頭しかいない、俺は置いていけ」と2人をブラッキーの背に乗せて送り出します。コグバーンはブラッキーに鞭打って、広い広い荒野を駆けていきます。ブラッキーも2人の人間を乗せながらも懸命に走り続けるのでした。やがて日が暮れ、夜になると、ついにブラッキーの足が止まってしまいます。コグバーンはマティが「やめて」と言うのも聞かず、ブラッキーの身体にナイフを突き立てました。再び走り出すブラッキー。しかし、それも長くは続かず、遂に力尽きて倒れてしまいます。コグバーンは銃を取り出すとブラッキーを撃ち殺しました。大切な愛馬を殺され、意識が朦朧とする中でコグバーンを叩くマティ。それでもコグバーンは嫌がるマティを抱きかかえて走り出します。やがて雪が降り始め、コグバーンも膝をついてしまいます。コグバーンはマティを抱きかかえて疲れ切った腕を高く上げ、夜空に銃声を鳴り響かせます。地面にへたり込む2人の向こう側に見える小さな一軒家に、ゆっくりと明りが灯るのでした・・・。

その後

マティはコグバーンのお陰で一命を取り留めますが、彼女が目を覚ます前にコグバーンは旅立ってしまうのでした。そして25年後。大人になったマティはあの蛇のせいで片腕を失っていました。結婚もせず、子供も産まずに過ごしてきたマティは、世間から「変わり者」という目で見られながらも、女手ひとつで父の牧場を立派に継いでいたのでした。あれから一度もコグバーンに会っていなかったマティ。コグバーンがワイルド・ウエスト・ショーという見世物に出演していると知ったマティは、ショーの会場に訪ねていきます。しかしコグバーンはつい3日前に体調を崩し、亡くなっていたのでした。マティはコグバーンの遺体を引き取り、自身の家の庭にお墓を作って埋葬します。ラビーフもあの後行方不明になっており、彼らと過ごした数日間を思い出しながら、マティはコグバーンの墓前で祈るのでした・・・。

キャストとスタッフ

キャスト

  • ルースター・コグバーン・・・ジェフ・ブリッジス
  • マティ・ロス・・・ヘイリー・スタインフェルド
  • ラ・ビーフ・・・マット・デイモン
  • トム・チェイニー・・・ジョシュ・ブローリン
  • ラッキー・ネッド・ペッパー・・・バリー・ペッパー
  • ストーンヒル・・・デイキン・マシューズ
  • 葬儀師・・・ジャーラス・コンロイ
  • エメット・クインシー・・・ポール・レイ
  • ムーン・・・ドーナル・グリーソン
  • マティ・ロス(大人)・・・エリザベス・マーヴェル

スタッフ

  • 監督・・・ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
  • 脚本・・・ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
  • 原作・・・チャールズ・ポーティス「勇気ある追跡」
  • 製作・・・スコット・ルーディン、イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
  • 製作総指揮・・・スティーヴン・スピルバーグ、ポール・シュウェイク、ミーガン・エリソン、デヴィッド・エリソン、ロバート・グラフ
  • ナレーター・・・エリザベス・マーヴェル
  • 音楽・・・カーター・バーウェル
  • 撮影・・・ロジャー・ディーキンス
  • 編集・・・ロデリック・ジェインズ
  • 製作会社・・・スコット・ルーディン・プロダクションズ、スカイダンス・プロダクションズ
  • 配給・・・パラマウント映画
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    本当の勇気を示せ!~映画「トゥルー・グリッド」~